記憶の旅 中庭光彦の研究室

都市や地域の文化について

『東京 都市化と水制度の解釈学-都市と水道における開発・技術・アイディアの政治』発行

 多くの大学には独自の出版組織がある。大学研究者が売れ行きに左右されずに、研究成果を世に問えるためのしくみだ。法政大学出版会、中央大学出版部、名古屋大学出版会などあるが、多摩大学にも「多摩大学出版会」がある。本格的研究書を発行し始めたのが2020年だが、2021年となり、その3冊目として、私の『東京 都市化と水制度の解釈学-都市と水道における開発・技術・アイディアの政治』が発行された。

 

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 東京を軸にした水開発史(治水、利水)に加え、水文化や社会経済史を統合した独自の内容となっている。読んだ人は、自分がいま水について抱いている常識に疑問をもつことになると思う。

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東京 都市化と水制度の解釈学

 目次はこんな感じ。

第1 章 アイディアによる制度変化論
 第1 節 新制度論による説明
 第2 節 水管理のアクターとは
 第3 節 制度とは
 第4 節 開発におけるアイディアとは何か
 第5 節 アイディアの機能 
 第6 節 制度変化の意味 

第2 章 東京市における上水道の優先敷設 
 第1 節 なぜ下水道ではなく上水道を優先したのか 
 第2 節 感染症という不確実な危機の発生
 第3 節 上水道の先行 
 第4 節 消防の水道
 第5 節 地主にとってのし尿流通
 第6 節 鉄管、注射、人造肥料
 第7 節 技術を理解した消防士

第3 章 東京市膨張・発電水利・河水統制 
 第1 節 水道広域化の開始
 第2 節 東京市から大東京市への拡大
 第3 節 連続する水道拡張事業 
 第4 節 東京市水道の拡張過程
 第5 節 二ヶ領用水問題と発電事業・河水統制
 第6 節 都市化・農業・生活用水・発電の制度配置転換
 第7 節 資源統制というアイディアと制度配置

第4 章 郊外化と多摩地域水道都営一元化というアイディア 
 第1 節 郊外化という場
 第2 節 多摩地域への人口拡大と住宅プレイヤー
 第3 節 水回り─住宅市場の成立
 第4 節 多摩地域水道都営一元化過程の開始
 第5 節 各市町村による水道経営時代 
 第6 節 都営水道から各市への分水時代
 第7 節 逆委託方式による都営一元化時代
 第8 節 逆委託解消時代
 第9 節 都営一元化過程の時期区分
 第10 節 多摩地域給水のアクターの変化
 第11 節 郊外化における広域化の意味─制度複合
 第12 節 人口減少期の東京郊外という制度

第5 章 脱・水都化─道路と水路の立体利用
 第1 節 人口増加で生じる排水問題と脱・水都化 
 第2 節 地盤沈下と工業用水
 第3 節 残土処理による水面埋立 
 第4 節 下水道整備前
 第5 節 都市河川の下水化─36 答申の意味
 第6 節 高度成長期の下水道行政
 第7 節 山田正男に見る道路を中心とした都市計画アイディア 
 第8 節 都市空間の高度利用から都市再生へ

第6 章 総合治水の解釈学─オーラルヒストリーを活用して
 第1 節 都市水害の発生 
 第2 節 総合治水対策小委員会
 第3 節 河川と下水の関係
 第4 節 建設省における河川と都市
 第5 節 総合治水から流域治水へ 
 第6 節 棲み分けの調整方法 

第7 章 東京─都市と水道の制度の行方
 第1 節 東京─都市と水道の制度 
 第2 節 東京─都市と水道のこれから

補 章 構築すべき水文化 
 第1 節 水道の「当たり前」を剥がす─水道文化 
 第2 節 排水と廃水─排水の文化 
 第3 節 水防の感覚─治水の文化 
 第4 節 洗う文化と清潔感
 第5 節 コンパクトシティと盆地地下水都市─地下水利用の文化

近代東京水政策史年表