記憶の旅 中庭光彦の研究室

都市や地域の文化について

多摩学への試み-多摩地域研究

 このたび、『多摩学への試み-多摩地域研究』が多摩大出版会・ぶんしん出版より発刊されました。

アマゾンは↓

https://www.amazon.co.jp/%E5%A4%9A%E6%91%A9%E5%AD%A6%E3%81%B8%E3%81%AE%E8%A9%A6%E3%81%BF-%E5%A4%9A%E6%91%A9%E5%9C%B0%E5%9F%9F%E7%A0%94%E7%A9%B6-%E5%AF%BA%E5%B3%B6-%E5%AE%9F%E9%83%8E/dp/4893902105/ref=sr_1_2?dib=eyJ2IjoiMSJ9.003qHRIK6LrqOTGiBsIi3o5Cu7poV49kXTLb2JF0igecBKKH21xiqH-kb5EpKnG-fUtCgDGuNYrpBwrKpmHLcg.lafBFfSQYBZzVszXd9frvpGecB_BiqJ5SU6gcn8KHt8&dib_tag=se&qid=1712224745&s=books&sr=1-2

目次を記しておきます。

序言 「多摩学」への思い(寺島 実郎) 3
(再録)多摩の地域史が世界史につながる瞬間 5

第1 部 多摩地域の時代認識

第1 章 時代認識のための多摩学(中庭 光彦) 17
 第1節 多摩を調べることで広がる視野 18
 第2節 多摩大学の「多摩学」―時代認識のための多摩学 22
 第3節 時代に応じて異なる地域学 25
 第4節 地方の時代の多摩地域問題 30
 第5節 多摩で考える想像力 35

第2 章 八王子千人同心による蝦夷地開拓(中庭 光彦) 39
 第1節 八王子千人同心とは 40
 第2節 八王子千人同心の異文化体験 42
 第3節 松前藩蝦夷地経営 44
 第4節 幕府の蝦夷地政策の転換 52
 第5節 千人同心が理解した使命とは 56
 第6節 蝦夷地での千人同心 59
 第7節 八王子千人同心は多摩を探る視点の出発点 64

第3 章 自由民権運動三多摩壮士(中庭 光彦) 67
 第1節 自由民権運動の見方 68
 第2節 多摩地域における自由民権運動の概観 71
 第3節 壮士と青年の分離 75
 第4節 神奈川県議会と多摩地域東京府編入 78
 第5節 実業家利光鶴松と村野常右衛門 87
 第6節 京浜工業地帯と横浜・東京 93
 第7節 三多摩壮士が体現する周縁性 95

第4 章 軍需産業による「多摩-京浜地域」形成(中庭 光彦) 99
 第1節 軍需産業地域としての多摩 100
 第2節 多摩地域への工場立地 101
 第3節 軍需産業に対応した住宅政策 105
 第4節 中島飛行機の意味 110
 第5節 多摩地域と京浜工業地帯との関係強化 114

第5 章 少子高齢化社会 多摩地域の意味(中庭 光彦) 117
 第1節 東京の第二郊外化地域である多摩地域 118
 第2節 ディペンデントハウス 124
 第3節 東京に流入する労働者と団地建設 126
 第4節 多摩ニュータウン 129
 第5節 生活最小限住宅とアメリカン・ライフスタイルの結合 133
 第6節 私鉄による沿線開発ビジネスとショッピングセンター 139
 第7節 人口ボーナス退出後の多摩地域 142

第6 章 西多摩における人と自然(松本 祐一) 149
 第1節 西多摩地域の概況 150
 第2節 「緑」の歴史と西多摩 154
 第3節 大都市郊外における観光の価値~奥多摩の誕生 160
 第4節 人と自然の新しい関係に向けて 167

第2 部 多摩学の実践
第7 章 インターゼミ多摩学班の歩み(荻野 博司) 173
 第1節 14 年間の集積 174
 第2節 「大いなる多摩」 177
 第3節 多摩の魅力―住みやすさの追求 181
 第4節 ニュータウンへのまなざし 185
 第5節 地域のサステナビリティ 191
 第6節 防災にとりくむ 195
 第7節 多摩大学の役割 197

第8 章 多摩学研究の展開(松本 祐一) 201
 第1節 多摩学の社会工学的実践 202
 第2節 創業支援事業の背景と経緯 205
 第3節 多摩市と多摩信用金庫との創業支援事業の展開 211
 第4節 創業支援プラットフォームの構築 218
 第5節 郊外のワークスタイルを創造する 222

第9 章 多摩学研究とインターゼミ(荻野 博司) 227
 第1節 多摩学事始め 久恒 啓一(多摩大学名誉教授)  228
 第2節 多摩地域の金融機関史から見る多摩学 長島 剛 234
 第3節 多摩学班の第1 期生、子ども食堂の女将として活躍中 240
                  川野(鮎川)礼さん
おわりに (中庭 光彦) 244

 

 

古賀河川図書館の思い出

 日本で唯一の河川書誌家、河川文献収集家であった古賀邦雄さんが亡くなった。先週、久留米での通夜に参列したが、この25年ほどの記憶が点景のように私の頭を回っている。

 はじめてお会いしたのは、1999年か1998年後半だったと思う。水の文化センター立ち上げの中心メンバーに古賀さんが入っていたので、当時日田まで会いに行ったのが最初だろう。ちょっと記憶が薄くなっている。

 水機構でかつて補償担当の仕事も長く携わっていたこともあり、その知識は深かった。夜にお電話して、いろんな質問をして長電話につきあっていただいたこともしょっちゅうだった。フィールドワークにもしょっちゅうおつきあいいただき、山田堰や城原川、柳川などを歩いた頃を、思い出す。

 古賀さんは筑後川の文化、ダムの文化、補償の精神、河川の碑の調査など、筑後川をホームグラウンドにしながら、全国の河川文化を見ていらした。そして退職後は、私費で古賀河川図書館を筑紫野につくり、その後、久留米のご自宅につくり資料を若き研究者に提供していた。その蔵書もいまは久留米大学古賀河川文庫に収められており、河川資料の一センターとなっている。

 お世話になったこの記憶を、ここにとどめておきたいと思う。享年81歳。ご冥福をお祈りします。

 

オランダ、ベルギー

 オランダ、ベルギーに1週間ほど滞在してきました。

 オランダは20年ほど前に水管理の調査で訪れていますが、今回は観光モード。といっても、合理的な国柄だけあっ

ブリュージュ マルクト広場鐘楼より眺望 遠方が現在の港湾部で風力発電

レンブラント「夜警」に心が震える



て、人口減少や多民族化における成長力のカギを見つけることができました。それについては、またの機会に書きます。

 レンブラントの「夜警」、フェルメールの「デルフト眺望」とも再会。

 ブリュッセルミュージアムでは、家族とこどもだけではなく、多民族の社会人も展示を見入っており、EUへの移民の市民社会教育施設として機能していることも目にしました。

 足を伸ばした中世の港湾・水網都市ブリュージュではマルクト広場鐘楼に登ってきました。

 旅に出たら、高い所から眺望し、小径に分け入る。これが私の流儀です。

 

奈義町、吹屋のベンガラ色の町並み-岡山県 雨の三日間

 三日間にわたり、岡山県内を視察。最初は、奈義町合計特殊出生率が周囲に比べ異常とも言えるほど高いため、その取材のためにと、役場の情報企画課副参事の小坂氏より、話をうかがい、ある程度了解できた。

 折角なので、奈義から30分程行くと、鳥取県智頭町。この町も歩く。

 1日目は、岡山市内で、以前お会いした「みんなの集落研究所」の阿部さんと再会し、情報交換。

 2日目は、智頭、奈義町の山の駅でおいしい肉と野菜のバイキング。奈義は黒ボク土で野菜がおいしいし、奈義牛もうまい。午後は奈義町役場でインタビュー。

 3日目は、ベンガラの町並みで有名な、高梁市の吹屋。そして、倉敷市真備町岡山市備中高松城跡と巡ったが、3日とも曇天か雨。特に今日はどしゃぶり。

 雨と霧にけむる吹屋の町並みも良いもので、資料館の方に説明をうかがう。いまは103目の住民だが、一時は5千人以上住んでいたという。石見銀山大森町を思い出したが、豪商による山上の楽園という趣。ここもAdaptive Reuse。

 この三日間の取材は、春秋の私の授業・ゼミでの紹介ネタになる。

ベンガラの朱色で統一された吹屋の町並み

 

ディープな燕三条or三条燕取材

 先週9/4-8、多摩大学イノベーションエコシステム研究会の野坂先生、新西先生と燕三条の事業者を取材。5泊6日で11社はなかなかのボリュームな上に、お会いした社長・関係者が「すべて」考え方が異なっており、キャラが立っていらっしゃる。

訪問先はこちら。

sites.google.com

 私も大いに勉強になった上に、いま進行中のものづくり世界の大変動も肌身に感じる結果となった。これらは、2ヶ月ほどしたらイノベーション・エコシステム研究会HPに紹介していくが、今回のインタビューは武道で譬えれば一本勝負の連続という感じ。もちろん他の取材でもそれは同じなのだが、やはりツバメ、サンジョウは深い。

 大田区や他の土地の事業者とも異なるし。取材を重ねるほど、多様性が意識されてくる。

 さて、この地域といえば、背脂ラーメンとカレーラーメンは食べねば。

杭州飯店の中華そば 脂っこそうに見えてあっさり

大衆食堂正広のカレーラーメンタレカツ丼付き スープカツカレーでも楽しめる

社会、文化、歴史からイノベーションを考える

 7/6は、イノベーションエコシステム研究会の仲間と共に、燕三条地場産業振興センターでインタビュー。

 私だけ翌日も残り、大河津分水、横田切れ跡、分水商店街、弥彦山・神社、燕市図書館、三条市図書館と巡り、最後に燕市産業史料館主任学芸員の齋藤優介氏と会う。

 この史料館の展示フレームワークの見事さに昨年感じ入っていたのだが、齋藤さんは学芸員と共に(株)つばめいとコンシェルジュも務めている。文化・社会からイノベーションをつくるというのが私の考えなので、同様のことを実践されている方ではと思い、二日前にアポをとり訪問。

 ファクタリウム

factarium.jp

 についてもいろいろうかがった。

 考え方のベースが私と通底しており、意気投合してしまった。9月に訪問します。

燕市産業史料館のファクタリウムポスター前で齋藤氏(右)と