記憶の旅 中庭光彦の研究室

都市や地域の文化について

軽井沢夏期大学で東京水道史を話す

 8月4日、軽井沢夏期大学で「大東京生活水利秩序の形成」と題して話をしてきた。

この大学、歴史は古く、後藤新平新渡戸稲造が創設して今年で百周年となる。一時の中断を経て再開されても、今年で第70回。たいへんに歴史ある市民大学なのだが、単なる市民大学ではない。後藤新平は、創立時「通俗夏期大学」と称した。現在毎年の企画を担われてる京都大学名誉教授の渡邉尚先生は、後藤新平の「学俗接近」、新渡戸稲造の「専門センスよりコモンセンス」をこの軽井沢夏期大学に流れている思想であることを、60周年記念誌に書かれている。

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 驚いたのは、講師の持ち時間は150分。参加者は地元住民や軽井沢への来訪者、そして毎年やってくるファンが多いということで、無料にもかかわらず、いまどきの学生と違って寝る人もいない。「やさしく話されるより、むしろ難しい内容の方が好まれる」ということで、参加者に気迫がある。消費的な教養と、後藤・新渡戸が意図したコモンセンスは質が異なるのだ。この水準の学俗接近の場で話をすることができたのは、政策研究者としても貴重な経験となった。

 また、少し客観的に見ると、この催事は、多くの知識人が集まる交流の場であった軽井沢だからこそ続いてきたと言える。軽井沢ソフトパワーの一翼を担っている夏期大学であった。