記憶の旅 中庭光彦の研究室

都市や地域の文化について

オンデマンドでこそ教育コモンズの価値があからさまになる

 zoomでの授業、ゼミも2ヶ月が経った。オンライン授業とかリモート授業など称しているが、この授業の本質は、学生が授業を受ける環境を大学が制限しないこと、つまり、学生はどこでもいつでも受けることができることだということが、よくわかる。中には友達と停車した車の中で聞いている学生もいる。

 こうなると、学位発行機関としての大学の「教育」はどのような役割をもつのか。考えざるをえない。私は事前にすべての資料と課題を公開している、いわば反転授業を行っている。というのも、私が感染するかもしれないし、学生の通信環境が悪くアクセスできない場合もある。そのためにも、事前学習・事後学習を学生にレポートという形で課し、それを出さないと出席にならない。おかげで、学生に聞くと、昨年よりも勉強が忙しくなっており、毎日レポート書きに追われている。これはプラス面だ。

 このため、ゼミでは論文書きにより専念できる。しかし、この状況ではフィールドワークはできず、ズームでのインタビューになる。オンラインでは相手の信頼性や間の取り方をつかむのが難しく、学生は苦労することになる。

 おそらくオンライン教育は今後ベーシックツールになる。それは学生が学びの場を選ばないオンデマンドにならざるを得ないことを意味する。この時、オンラインで伝えきれないとみんなが思うコンテンツが自ずと浮かび上がってくる。それが独自の教育コモンズなのだが、そこまでいって初めて高等教育のオンラインはブレークスルーするのではないか。単に遠隔教育ができて便利と思っているだけなら、高等教育は通信教育に置き換わって、駅前留学のようなビジネスモデルになってしまうかもしれない。でもそこではクリエイティブな情報生産方法は伝えられないだろうけれども。